第 9 章 検証、収束、再現性
9.1 計算の完了と科学的妥当性
Section titled “9.1 計算の完了と科学的妥当性”計算が最後まで完了したことと、離散化が収束したこと、closure が適用できること、実環境を説明できることは別である。本章では、研究ケースで確かめるべき誤差を軸ごとに整理する。
9.2 誤差を支配する軸から検証する
Section titled “9.2 誤差を支配する軸から検証する”表 9.1 研究ケースで切り分ける主な誤差。各軸を同時に変更すると原因を特定しにくい。
| 誤差・近似 | 変える量 | 比較する目的量 |
|---|---|---|
| 表面の離散化 | mesh 密度・形状品質 | 表面電位、局所密度、物体別電荷 |
| 場の遠方近似 | Direct/FMM、、leaf の要素数 | 同じ保存電荷に対する |
| 周期遠方場 | 画像層数、Ewald 分割、Fourier 和の参照 | 非零場の絶対誤差、零モードの Gauss 則 |
| 軌道と衝突 | 、追跡上限 | 命中先、吸収・escape、軌道エネルギー |
| 帯電の更新 | 、同じ累積物理時刻 | 電荷履歴、電流、定常分布 |
| 有限標本 | 重み・粒子数・ray 数・seed | 平均、分散、低頻度の channel |
| 外部 closure | 型、、更新間隔 | 、固定電流の倍率、場の不足 |
優先する軸は目的量によって異なる。光電子の再吸収先なら ray 標本と衝突幾何、弱い外部場との比較なら周期場の非零モードの絶対誤差、長時間の帯電ならバッチ幅と closure の固定点を先に調べる。全 parameter に同じ労力を割くより、結論を変え得る近似を重点的に検証する。
9.3 独立した参照解による基本検証
Section titled “9.3 独立した参照解による基本検証”無場の直線運動、一様電場の等加速度運動、純磁場の速さ保存と旋回位相を確認する。滑らかな場では で誤差比を測る。刻みを小さくしたときは、追跡上限の物理時間 を保つよう step 数の上限も変える。
場は解析的な sheet の跳び、有限 panel の独立な数値積分、同じ P0 mesh の Direct 和、上部真空の Fourier 和などと比較する。 Direct と FMM の差は FMM の誤差を分離するが、共通の mesh 誤差は検出しない。零に近い基準場では相対誤差が発散するため、絶対誤差または代表場による規格化も使う。面上の評価点は片側極限の選び方で値が変わるので、手法の比較は面から離した点で行う。
幾何では一つの三角形への既知の命中、複数要素の最初の交点、箱の面と mesh の発生順、周期画像への衝突を確認する。境界反射があるケースでは chord 時刻近似も含めて刻み収束を確認する。密な接触 geometry では表面の重なり、法線、極小間隔の影響を調べる。
9.4 電荷の収支と channel 別の監査
Section titled “9.4 電荷の収支と channel 別の監査”表面の総電荷増分は
として確認する。導体再配分は各物体内で総電荷を保存するため、右辺へ新たな外部電流を加えない。開放系では外部から粒子が流入し外へ escape するので、表面だけの が保存される必要はない。閉じた光電子 channel、固定電流 channel、外部境界へ運ばれる電荷を別々に監査する。
軌道から得た吸収、目標電流に対応する電荷、実際に反映した補正電荷を区別して記録する。大きな正負の channel が相殺する場合、正味の残差だけでは標本不足を隠す。倍率、未解決率、各 channel の粒子数と絶対電荷を併せて確認する。
9.5 標本誤差と平衡判定
Section titled “9.5 標本誤差と平衡判定”独立で有限分散の標本に対する Monte Carlo の平均誤差は通常 の尺度を持つ。希少な escape、強い再重み付け、相関した更新の反復では、単純な標本数だけで有効精度を判断できない。粒子数や ray 数を増やす比較に加え、複数 seed の反復から主要量の分散を報告する。
バッチ幅を変えると粒子重みや整数化の端数も変わる場合がある。同じ最終バッチ番号より、同じ累積物理時刻で電荷履歴と電流を比べる。統計的な揺らぎがある平衡では、最後の一点ではなく時間窓の平均と分散を示す。電荷変化の監視量 の小ささだけで平衡を宣言しない。
9.6 再現性のために記録する情報
Section titled “9.6 再現性のために記録する情報”計算結果を再現するには、ソフトウェアの版、完全な入力設定、表面 mesh、入力速度分布、乱数 seed、並列構成、コンパイラと最適化条件を記録する。周期遠方作用素は生成条件とともに記録する。途中から再開した計算では、再開前後で同じ物理条件が続いていることを確認する。並列集約の順序と乱数列が変わるため、並列構成を変えた計算にビット単位の一致は一般に期待できない。